いつもふたりで、ASAICHI CAFÉ
「カップがいいのよ」
喫茶「ピーマン」で、たまたま隣り合わせたご夫婦。
その、奥さんのほうが言いました。
週に1度、車で館鼻岸壁朝市にやってきては朝市ストリートを歩き、ピーマンでコーヒーを1杯飲んで帰る。
おふたりは、八戸市の南の階上町(はしかみちょう)から、ここ何年も朝市に通っているのだそうです。
中心街にあるピーマンの本店には行ったことがないけれど、朝市のお店では常連さんなのです。
「この年になるとさ、子どもが相手してくれないから。2人で散歩でもするしかないじゃない(笑)」
顔を見合わせて微笑むおふたりです。
「このカップがよくて、いつも来てるの」
確かめるように、奥さんがまた言います。
サンタクロースになりきったマスターが、マグカップに入ったコーヒーを差し出しました。館鼻岸壁朝市の珈琲店では紙カップが多いのですが、ピーマンは陶器のマグカップです。
持ちやすいし、冷めにくいし、口当たりもいい。
「ちょっと優雅な気分になれるじゃない? 外国のカフェでコーヒー飲んでるみたいな。ま、行ったことはないけどね(笑)」
ときどき開かれる、アコースティックユニット「びぃだま」の朝市ライブも楽しみのひとつだと、にこにこしながらつけ加えます。
「じゃあ、また来週ね」
腕時計にちらりと目を落としてから、足取りも軽やかに人ごみの中に消えていきました。
海風にすっかり冷まされたコーヒーが、今まででいちばんおいしく思えたのは、名前も聞かなかったおふたりからさわやかな元気をもらったからでしょう。
雲の切れ間から差しこむ光が、通りを歩く人たちのほおを染めました。
「やっぱり日の光に当たらないと、人間、目がさめないもんよ」
クリスマス・リース屋のおじさんがテントから出てきて、東を向いて大きくひとつ、伸びをしました。
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。