ホタテ屋とソロモンの指環
館鼻岸壁朝市を読み解くキーワードの中に、「ミステリアス」が挙げられることは、まずまちがいないでしょう。
それはたとえば、こんな具合です。
45ℓポリバケツを3つも4つも並べて、ホタテの稚貝を売っているかと思えば、横にはキュウリと赤カブの漬物。
漬物はおやんずのお手製らしく、試食用に切って店先に並べたりするのですが、これを一口食べたお店のかっちゃ(おやんずのお母さん?)が、「酢、入れすぎ!」を連呼。これ見よがしにコーヒーで口直しをする(めっちゃ営業中ですけど、大丈夫!?)。
足元に目を落とすと、「世界名作全集 トルストイ」とか「コンピューター入門」の古本が、無造作に箱入りで。
並んだ野菜の奥には、長イスにかけてアツアツの汁物をほおばる一団。自転車も3台ほどディスプレイ(?)。
…ね? ミステリアスでしょ?
ユキパル女「あの…本当は何屋さんなんですか!?」
なんでも屋のおやんず「んん? ホタテ屋だよ?」
ユキパル女「でも今日、ホタテないじゃん!」
おやんず「ホタテね、先週すごく売れてね」
ユキパル女「えっと、あの自転車は売りものですか?」
おやんず「そうだよ~ん」
ユキパル女「えっ? コッチは、釣り針!?」
おやんず「うん。イカ釣り用」
ユキパル女「…素人が買ってもイカ釣れないんじゃ?」
おやんず「まぁね。でもほら、違うもんが釣れんじゃないの。いい男とかさ!」
ユキパル女「(笑)。おすすめ商品とかありますか?」
おやんず「これ、おもしろいと思うんだよね~」
と手に取ったのは、近代動物行動学の父にしてノーベル賞受賞者のコンラート・ローレンツ博士が書いた名著「ソロモンの指環」。
…ね!? ミステリアスでしょ!?
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