朝市ウォッチング

二戸からおふくろの味をお届け〜高橋豆腐店

 春の嵐が直撃し、雨と風が暴れまわったこの日の館鼻岸壁。それでも高橋豆腐店には、続々とお客さんがやってきました。上村隆雄さんの上村商店の向かい側、ふだんはテントで営業していますが、二戸から乗ってきた軽自動車がそのまま店代わりに。じょじょに空が明るくなるとますますお客さんは増え、豆乳をはじめとした商品がどんどん売れていきます。


嵐の晴れ間に豆腐を買うひとびと

 国産大豆と井戸水とにがり。「素材がシンプルなぶん、作り手の性格や体調まで出る。難しいけど、おもしろい。深いですよ」 お客さんを見送った高橋活博さんが、楽しそうに言いました。

 活博さんは、岩手県二戸市にある高橋豆腐店の二代目。横浜や盛岡で洋食の料理人として働いていましたが、30代のときに帰郷。
 朝が早い豆腐屋の仕事の厳しさは幼い頃から見てきたけれど、「豆腐のおかげで大きくしてもらった感謝の気持ちと。なにより、うちの味を待ってるお客さんのこと考えたら、辞めるわけにはいかなかった」 豆腐づくりを継ぐ決意をしました。

 新しいものを作るよりも、今の味を「おいしい」と言ってくれるお客さんを大切にすることを選んだ活博さん。あえてどこにも修行には行かず、師匠はご両親です。
 父・母それぞれが豆腐を作っていた高橋家には、固めでしっかりした “おやじの味”と、ふわふわソフトな “おふくろの味”がありました。「お客さんの間でも好みが分かれてました(笑)。僕自身はそれぞれのいいとこ取り。でもどちらかというと、おふくろの味を受け継いでいると思います」

 しっかり豆の味わいが楽しめて、青臭さのないさわやかな豆乳。
 (以前、朝市なうにも登場してもらいました!)
 なめらかな舌触りの寄せ豆腐。
 ずっしり重い木綿豆腐。


寄せ豆腐。プリンのような食感とほんのり塩味が特徴

 スーパーのパック豆腐のほうがなじみはあるのに、こちらのほうが懐かしい味だと感じるのが、自分でも不思議です。するりと舌にのり、喉を通りぬけた豆腐は自然にからだになじんで、栄養になっていくような気がします。

 この真っ白い豆腐に「人柄が出る」としたら…。活博さんが受け継いだのはきっと、技だけじゃないのでしょう。寄せ豆腐のほんのりとした塩味とプリンのような食感を楽しみながら、そんなことを考えました。

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