八戸館鼻朝市の本格珈琲。
S.Roasteria エス・ローステリア
一口のあとに流れる豊かな休息を味わう1杯のために
気になる店というのは道すがら見つけることが多い。
久々に通った道で、そこにあったはずのものではなく、全く別の店構えになっていたりすると気になり度合いはますます加速する。八戸市根城5丁目の司法センター通り、ファミリーマートの隣にある『S.Roasteria(エス.ローステリア)』は、まさにそのひとつ。
‘店主こだわりの自家焙煎珈琲’と書かれた看板に引き寄せられるように入った店内には、カラメルのように甘く香ばしいコーヒーの香りに包まれている。
カウンターにはブラジル・キリマンジャロ・ガテマラなどの10種類ほどのストレートコーヒーと八戸ブレンド・根城ブレンド・季節のブレンドなどボトル詰めされたコーヒーが並ぶ。
穏やかな表情でカウンターに立つのは焙煎士であり、エス.ローステリアを創めた瀬川高輔さん。
ボトルに貼られたラベルを読みながら、ブレンドの違いについて聞くと
「八戸ブレンドはスペシャリティコーヒーを使っています」と爽やかな笑顔が返ってきた。
スペシャリティコーヒー? 普段、コーヒーは良く飲むが、正直主要な銘柄しか判らない。おずおずと…って?と問うと、
市場に流通するコーヒー豆の中でも、特に質の高いもので、生産地域、農園(生産者)から収穫・処理方法など国際的な基準に基づいて厳しく、選別・評価されたコーヒーをスペシャリティコーヒーというのだが、同じ産地でも農場によって違う個性を持っているのが特徴。
「同じブラジルでも、農場の土壌や栽培法によって味が違うんですよ。とにかく美味しいコーヒーを飲んで欲しくて、うちでは基本的にスペシャリティコーヒーを仕入れて、その豆にあった焙煎をしています」
コーヒーの世界は、奥深い。
美味しいコーヒーって?から飲み比べてたどり着いたスペシャリティコーヒーと自家焙煎
瀬川さんがコーヒーに興味を持ったきっかけは、就職した食品会社でコーヒー飲料を担当した時からだった。
様々なコーヒーを飲み歩き、『美味しい』と感じたコーヒーの有地を調べるうちにスペシャリティコーヒーの存在を知り、『美味しく届けたい』と考えた時、鮮度管理や焙煎度合いを自分で見極められる自家焙煎しかないと思ったという。
それぞれのコーヒーがもつ風味をちゃんと出したいと焙煎機にもこだわり、導入したのはディートリッヒ社の焙煎機。極厚鉄板から出る遠赤外線で芯まで火が通り均一に焼けるとともに豆が煙臭くならないのだそうだ。
週4回から5回行う焙煎による焼きたて・挽きたて・淹れたてで仕上げられたコーヒーは一口で多様な風味を感じることが出来る。
瀬川さんはお勧めを聞かれると「お好みは?」と答える。
自分の好みのコーヒーを探すことも楽しんで欲しいと考える「飲む方にとっての『一番』を探す手伝いやリフレッシュや気分転換するための一杯になればいいなぁと。それだけです」瀬川さんにコーヒーの魅力を訊ねると「美味しいコーヒーを飲むと‘ふ~’ってなりますよね。なんか、落ち着くというか。ただ飲むだけじゃなくて香りを楽しんだり…。その『抜ける』感じがいいんです」
ディートリッヒ社の焙煎機を使用。極厚鉄板から出る遠赤外線で芯まで火が通り均一に焼け、豆が煙臭くならず、コーヒーがもつ風味を出してくれる。
新しい挑戦
2009年5月にオープンした『S.Roasteria(エス.ローステリア)』。元々、ご両親はお茶屋さんを営んでいたという。お茶屋さんからコーヒー店への転身についてご両親や周りの反応は?と聞くと
「両親からは思ったよりも理解が得られましたね。お客様からは『お茶やめちゃったの?』って(笑) 店内レイアウトはコーヒーが全面に出ているのでそう思われる方も多いですが、最近はお茶を買いに来たお客様が香りに誘われてコーヒーを買っていかれる方もいらっしゃいますし、その逆もあります。相乗効果になっているかもしれないです」
でも、これまでの形態から全く違う店舗への転身に不安はなかったのか?と意地悪な質問をすると
「不安は無茶苦茶ありましたよ。でも、八戸の喫茶店がどんどん減っちゃってコーヒーを飲む機会も少なくなっているような気がして…。それと八戸のコーヒーって基本的に浅煎りが多いんですね。自家焙煎を行っているところも少ないし、もちろんスペシャリティの豆とかは流通していなかったし、コーヒーをフレッシュな状態で提供できることで差別化できるかな、と思ったんです」経営者の顔を覗かせた。
エスプレッソにフォームミルクを注ぎ、ミルクの流れを操りながら双方の色のコントラストによってバラ飾りや葉の模様をフリーハンド描くアート。また、エスプレッソにカフェ・ラテより泡の多いミルクを注ぎ、つま楊枝やココアパウダーなどを使用してデザインを描いたものをデザインカプチーノ。
ラテ・アートはシアトルのカフェから始まり、デザインカプチーノはイタリアのバールから始まったといわれている。ラテ・アートへの人気が高まり、世界中でバリスタたちが腕を競う大会が行われると同時に、家庭でもラテ・アートを楽しむ人が増えてきている。
さらに今年から舘鼻岸壁朝市でもコーヒーの販売を始めたという。
「朝市には20年前くらいから出店していてお茶を売っていたんです。コーヒーは今年から本格的に場所を頂いて始めました。ドリップと豆の販売と」朝市には豆入のボトルと電動ミル、ドリッパーを持ち込み、店と同じように注文後に豆を挽いてドリップするという。考えただけで手間だ。
「手間は掛るんですけどね。やっぱり美味しいコーヒーを飲んで欲しいですから」またも爽やかな笑顔で返されてしまった。出来ればコーヒーの生産現地やエスプレッソの本場イタリアへ行き、コーヒーを極めたいと今後の抱負をあと語ったあと「やっぱり、お茶も出したいですねぇ」と加えた。
極上のひとときと憩いのための‘1杯’にひたむきな若干29歳の瀬川さんが淹れるコーヒーはやはり爽やかな味わいがする。
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