八戸学院大学ジーパン学長 第8回
冬こそ遊びまくれ!
と、威勢良く言ってみたものの、誰にも負けないくらい寒がりな自分である。
冬の週末は、誰が何と言おうと背中を丸め炬燵に入り、ミカン三昧とマラソン中継観戦に限る。そして昼から熱燗とうたた寝、いつの間にか爆睡。翌日、早朝の温泉で凝った肩をほぐす。
何ともいえぬ幸せ感溢れる、八戸地方の典型的なお父さんの冬の週末の姿であろうか。日に数回の雪かきに悲鳴をあげる津軽地方の方には大変申し訳ないが、八戸の冬は比較的雪が少なく、肉体的にはとても恵まれている。千鳥足での凍結路、すってんころりさえ気をつければ、津軽の地吹雪のような生命の危険を感じる事は無い。一度、転んで眼鏡を曲げてしまったことがあったが。
小学生時代はグランドに父兄が水を張って、スケートリンクを作ってくれた。まだ暗いうちから、スケート靴を履いて小さなリンクをひたすら回っていた記憶がある。
そして大学、サラリーマン時代は、バブルの絶頂期。「私をスキーに連れてって!」とばかり世の流行に乗り、毎週末、信州や白馬のゲレンデに車中泊2日のスキーに出かけていた。貧乏だったので、宿は駐車場の車の中。そのバブル世代が一気に子育て世代に入り、バブル崩壊も相まってスキー場は寂れたらしい。らしいと言うのは、そういう私も、バブル崩壊とともに全くウインタースポーツから遠ざかってしまった。
現在、八戸学院大学自転車競技部監督として、春から晩秋までは日々早朝の自転車練習に明け暮れているが、年末から3月の春合宿までは「完全なるOFF」と決めていた。そもそも外は寒いし、凍結しているし、自転車には乗れないものと決めつけていたのだ。
ところが最近、少し「変な方々」が現れ始めた。イキイキとこの冬に、外を自転車で駈けているのである。しかも厳冬期の八甲田山や十和田湖、はたまた何人も近づく事を許さない「津軽海峡冬景色」の竜飛岬などなど。
明らかに変である。寒い中を走り回っても、何も生み出さない非社会的な営みである。この変な方々の嬉々とした笑顔には飽きれるばかりだ。
冬は炬燵にミカンだ、と、このおかしな現象には静観を決めていたが、どうも津軽地方を中心にあらたなムーブメントの信者は増え続け、さらに不穏な事に、秋田方面や宮城方面でも活動を広げつつあるというではないか。
そして2月にはついに、青森県サイクルツーリズム推進協議会なる公の会合で、この変な活動がもしかしたら青森県の観光活性化のキラーコンテンツになるのではないかと、講演が行われるまでになった。
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もはやサイクル関係者、観光事業者、行政企画マンも見過ごす事ができなくなった(と思っているのは私だけか?)。
全国でサイクルイベントが乱立し飽和状況となっている現状の中、玄関口の八戸三沢を起点に奥入瀬などへアクセスし、新雪の渓流沿いを十和田湖までサイクリングする。そして雪と戯れたあとは温泉、八戸の横丁で、八戸せんべい汁などの温かい郷土料理をいただく。季節感の無い、他の南国などには絶対に真似の出来ない、キラーな新しいサイクリングコンテンツである。
国内のマニアックなサイクリストはもちろん、雪の無い国々、例えば台湾、香港、東南アジアの富裕層には、とても魅力的なアクティビティーになり得るスペシャルな企画だ。先日、インドからの客人も雪を探し求めていた。彼らにとって、初めて見る雪で遊ぶのは、一生に一度あるかないかの特別な出来事なのである。
冬でも比較的安定した八戸に滞在し、食も楽しみながら近隣のスキー場で雪遊び、そして冬の奥入瀬十和田湖を非日常的なサイクリングによって五感で体験。そんな特別な体験をした観光客は、ソーシャルメディアを駆使して冬の青森の宣教師になってくれるに違いない。
想像力次第で周囲が全て遊び場になる八戸。冬でこその、その魅力にまだまだ気づいていないのではなかろうか。
私は気づいている。しかし、寒がりなのだ。だから冬は自転車は乗らない……と、スノーサイクリングツアーを固辞しているのだが、来年はどうなっているか、不明である。洗脳されているかもしれない。
Love the Winter!
写真:江利山元気
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