終わってないから、全て良しでもない。

 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)がモデルのNHK連続テレビ小説『ばけばけ』主題歌『笑ったり転んだり』(ハンバート ハンバート)の歌詞は「毎日難儀なことばかり、日に日に世界が悪くなる」などけっこう暗いが、生活実感に近い気がする。辞めるなコールが起こった石破政権に代わって10月に高市新総理が誕生し、初の女性総理ということで支持率も高いらしい。新総裁就任あいさつで「ワークライフバランスという言葉を捨て、働いて働いて働いて働いて働いて参ります」と5回繰り返し、今度はそれが流行語大賞にもなった。それが流行った記憶はないのだが、流行ったと繰り返されるうちに流行ったかなという気分になるから不思議である。
 大坂・関西国際万博も、最終日は盛況で多くの来場者が名残りを惜しみ感動のフィナーレだったとか。キャラクターのミャクミャクも大人気だというから見慣れてくれば、可愛いのかなと思えてくるから人間の感覚(というより自分の感覚)はあてにならない。別に欲しくはないけど。
 年末の12月8日深夜に発生した青森県東方沖・八戸震度6強地震の被害は当初思ったよりも傷が深かった。天災は忘れた頃にやってくると言われていたが、忘れる暇もないほど立て続けである。地震があると東日本大震災がよみがえり、インフルエンザが流行ると、コロナ禍のことが思い出される。トレンドだ、先端だとかで振り回されながら1年が終わってしまう気がしている。ポジティブに前向きに生きる姿勢に欠点があるとすれば、過去をふり向かないこと、過去を無視しがちなこと。過去を歴史と言いかえてもいいかもしれない。「終わりよければ全て良し」として、結果にイチャモンつけるなという風潮には少し疲れる。
 完全に終わったものはない。「傷ついていることを自覚できないほど、深く傷ついているのだ」と読んだ本にあった。2026年が始まった。

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