菜膳わたすげ ふるさと昔料理 その二
家族で食卓を囲む幸せ 年に一度の特別な時間
山ほどのお菓子を抱え、仕事帰りの父が帰宅する年の瀬。男の子は父に従い、神棚掃除や正月飾りの支度を。女の子は母と湊の市場へ買い出しに行き、正月料理を手伝う。
そうして迎える大晦日や元旦は、年に一度の楽しみだ。
子持ちがれいの煮つけ、たらの子炒り、天ぷら、あんこ餅…とっておきのご馳走が並ぶ。
横座(上座)に座る父が箸を付けるのを待ってからようやく口に運ぶ。
きんぴらごぼうに入っている煮干は今と違って子どもたちのご馳走の一つ。
取り合う子どもたちの姿を、母が見守る。
大きな樽には柿が漬けてあり、すが(氷)を割って取り出す瞬間が待ちどおしい。
食事が済むと炭こたつで、かるたやおはじきに興じた。
―50年前の八戸の正月風景。
「何より、家族揃って食卓を囲むのが嬉しくて」と康子さんは、八戸の正月お膳を再現してくれた。
現在のように贅沢なおせちではないが、まばゆいばかりの幸せがあった。
康子さんにとって「世界一おいしかった」というその味は、素朴だが、本当の豊かさに満ちていた時代の象徴かもしれない。
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