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ジーパン学長コラム第2回 『足りないのは、あなたの想像力。』〜大谷真樹


リヨンのマルシェ

 

 誰だ、八戸を勝手に田舎だと決めつけているのは。
 少なくとも僕の両親、親類縁者は小さい頃から僕に「アオモリはイナカダ!マイネ!マイネ!ナンモネ!」と、ネガティブな言葉を執拗にインプットしてきた。
 30年以上前、その泥沼のようなマイナスの呪縛から逃れる唯一の方法は、花の都大東京へ憧れ旅立つ事であった。
 食い入るように見入った「太陽に吠えろ」のオープニングシーンの新宿高層ビル群。
 東京に出てまず自動で開く山手線の扉に驚きながらも目指したのは、その高層ビルのひとつ住友三角ビルであった。
 全てが輝き、田舎者は溶け込めず、常にどこかで排他される存在であった。
 言いようの無い負のコンプレックスは恐らく僕らの世代以降も続いたのであろう。
 相変わらず多くの若者が八戸を飛び出し東京を目指す。

 果たして東京が正なる存在なのか?
 こんな疑問を持ち出したのはそんな昔の事ではなく最近の事だ。
 疑う事無く東京がスタンダードで、必要な情報は東京にて接するもの。ずっとそう決めつけていた。
 若い頃からアジアを放浪し、仕事でも諸国を見歩いていながら日本の歪み、八戸の可能性に気がつく事は無かった。

リヨンのマルシェ

 仕事に疲れて正月や盆に帰京した時にタクシーの運転手の言う「なんも美味しいものも、見るどこもね!」
 その敗北感漂う言葉にも疑問も感じず頷いていた。
 八戸の地域活性化に関わるようになり、改めて県内各地を自分のこの目で確かめて歩いた。
 すると必死に戦うビジネスの第一線を離れたせいもあるのか、全てが新鮮で豊かに見えだした。
 今までの米国型資本主義の土台に乗った「マネー」や「スピード」などの目眩のするような価値観。
 その価値観ががらりと体質改善のごとく変質した時、八戸の周囲はとたんにキラキラと輝いて見えてきた。
 自分だけが見えなかったのだろうか。何か悪い中毒性の病気から生還したような気分ですらあった。

 この2年ほど、夏はフランスの郊外を中心に旅をしている。
 そこには、改めて八戸や周辺の素晴らしさを実感したり、ちょっとした工夫からヒントを得たりととても充実している。
 数年前であれば、そのような景色は目に入らなかったであろう。そして大切な目に見えない「失くしていた価値観」に気づく事はなかったであろう。

リヨンのマルシェ

 八戸の人口は、フランスでは第8番目の都市に匹敵する。
 八戸の商業人口60万人で考えると、食の都グルメで有名なリヨンより大きな都市だ。
 毎朝のマルシェには近郊の素晴らしい食材が並び、古い佇まいの街並には世界中のグルメ達が集まってくる。
 そして何よりも腕を磨きたい若者達が、リヨンの学校やレストランに修行に世界から集うのだ。
 リヨンは川しかない街だ。それに比べると青森県は豊かな海を持つ、それも太平洋、日本海、津軽海峡、陸奥湾と4つの多様な海を抱え、その中心となる漁港が八戸にあるのだ。
 そして背後にはさらに豊かな山々を抱えている。また県南地区は多種多様な野菜や果物を作り、また地形の恵みであろうとても美味しい産地でもある。
 あらゆる神々に感謝したくなる土地なのだ。せんべい汁にはじまり八戸ブイヤベースも全国ブランドになるであろう。
 次のステージは凄腕の料理人たちを八戸に向かわせる事だ。ローヌワインに負けぬ米の醸造酒「地酒」もあるぞ。
 八戸が日本を代表するグルメな町になるのに、あと何が足りないのか?
 
 足りないのはあなたの想像力だけだよ。


マリーバコーヒー

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