『ドライブ・マイ・カー』
遅ればせながら、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』(監督:濱口竜介・原作:村上春樹)を観ました。3時間の長尺、それほど長くは感じませんでしたが。
ネタバレ的なことになりますが、チエホフ(1860年~1904年)の戯曲『ワーニャ伯父さん』がモチーフとして使われており、久々にチエホフという名前に出会いました。
ずいぶん前にちらっと読んで、チエホフはサハリン(樺太)旅行を決行し日本に渡ろうとして果たせなかったはず、と思い出しました。
調べると作家の生誕地はアゾフ海東部に面した港町タガンログ。今まさにロシア軍が制圧しようとしているウクライナ東部と国境を接した場所で、そこにはチエホフ記念館もあるらしいのです。つい最近まで「アゾフ海」すら認識がなかったのですが。
昨年はドストエフスキー生誕200年ということだったし、つい大人買いしてしまったギャグ・コミック『風雲児たち』(みなもと太郎・全20巻)にも日本とロシアの関係が描かれており、あらためて昨年亡くなったこの歴史マンガ家を賞賛したい気分でいたところで、長い縄の結び目のように次々と〈ロシア〉がつながっています。
『ワーニャ伯父さん』終幕のシーンで映画も終わります。
「でも、仕方がないわ、生きていかなければ! ね、ワーニャ伯父さん、生きていきましょうよ。年をとってからも、片時も休まずに人のために働きましょうね。そして、やがてその時が来たら素直に死んで行きましょうね。あの世へ行ったら、どんなに私たちが苦しかったか、どんなに涙を流したか、どんなにつらい一生を送って来たか、それを残らず申上げましょうね。すると神さまは、まあ気の毒に、と思ってくださる。そして現在の不仕合せな暮しを、なつかしく、ほほえましく振返って、私たち――ほっと息がつけるんだわ。」(神西清訳/一部略)
奪われた多くのウクライナの人々の命と生活が、オーバーラップして胸が衝かれました。
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