志ん朝の『文七元結』に再度泣いた

深夜、久々に古今亭志ん朝の『文七元結(ぶんしちもっとい)』を音源で聴いて、泣きたくなってしまった。
賭博で借金をこしらえた左官の長兵衛。その借金を返そうと吉原の店に自分を売ろうとした娘お久。その話にほだされた吉原の女将は「猶予の1年が過ぎたら鬼となってお久を店に出す」と言いながら50両の金を長兵衛に貸す。改心した長兵衛は帰り道の吾妻橋で、奉公先の50両をなくした(と思いこみ)身を投げようとする若者、文七に出会ってしまう。引き留めようと説得するが、それでも死のうとする文七に50両を投げつけるようにして去っていく長兵衛……。三遊亭圓朝作の名作人情噺。
いくら人助けとは言え娘を売った金を赤の他人にくれてやるなんて偽善の極み、との気持ちも心の隅になくはないが、人の生き死に対して逆に切羽詰まっていく長兵衛の心持ちの止むに止まれなさが、笑いながらも痛く突き刺さる。
三代目古今亭志ん朝が亡くなったのが2001年10月1日で、22年前、享年63歳だったのだ。言うまでもなく落語の天才志ん朝への思いを深くした秋の夜。

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