鉄腕アトムは悲しんだ。

 AIの発達を横目で眺めながら、いずれは手塚治虫『鉄腕アトム』のような人型ロボットが登場するのだろうかと思う。どのぐらいの世代までがアトムを知っているのだろう。アトムの出自は1951年4月から1年間、漫画雑誌に連載された『アトム大使』。アトムの生みの親は天才科学者の天馬博士で、交通事故で息子の飛雄(トビオ)を失った悲しみのあまり、飛雄そっくりの少年型ロボット「アトム」を製作した。しかしロボットが人間と同じように成長できないことに失望し、アトムはサーカスに売り飛ばされる、そんな悲しい物語からアトムは始まっている。トビオ(=アトム)は様々な能力を持つ優秀なロボットである一方で、人間と同じような感情を持ち合わせていると設定されているので、正義感の強い永遠の少年ヒーローだった。
 人型ロボットが現実味を帯びてくる現代では、人間の仕事が奪われるかもとか様々な問題が浮上してくる。
 2月に発表された第13回日経「星新一賞」で、一般部門の受賞4作品のうちグランプリを含む3作品が、生成AIを使用して創作されたものだったという。同賞は人工知能等の応募作品も受け付けるとの条件だったそうだが、その結果、審査では作品が人間によるものか、AIなのかが全く区別がつかなかったという。審査員を務めたノンフィクションライターの最相葉月氏が「AIの執筆した文章は、もう読みたくない」と審査員を辞退したという。
 桂枝雀の落語『天神山』で、いつもくすり笑う場面がある。ヘンチキ(変わっている)の源兵衛は、普通の花見じゃ面白くないとばかり寺に「墓見」に行く。色気のある小糸という名の石塔の前で酒盛りを始める。「人間、同じ住むならこんな閑静な所がいいですね、うらやましいですね」などと、墓石を話し相手に一人で喋って一人で飲んでいる。次第に酔いが回ると「ちょっと酔うてきたって?このぐらいの酒で酔うてきたりしますかいな。それが証拠に顔が赤うなってきたって?あんたわからへんやろ…石やのに」
 AIを話し相手にしている人は案外多いようで、その時に「だってあんたAIやろ」と思う瞬間はないのだろうかと、ちょっと想像したりする。

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