ポール佐藤の「まちの音まちの色」第18回

通りかかる度にずっと気になっていた絵になるビストロ。
職場の食事会で初めて入った。店の中もいい雰囲気で、食べたことのない本場のチーズのおいしさに話も弾んだ。同年代の仲間とのおしゃべりは、近くが見えないだの、パスワードを忘れるだの、老化の話題が多かったけど。

 もしかしたら誰もが頭の中に机を持っていて、その広さや引き出しの数が、一度にこなせる仕事量や記憶力を決めているのかな。広々とした机なら、辞書や事典、研究データを広げ、実験をしながら難しい科学論文をまとめ上げられるかもしれないし、引き出しがたくさんあるなら、歴史でも思想でも膨大な専門知識をしまっておいて、博学者として名を残すかもしれない。
子供の頃なら机の上も引き出しの中も余裕があるから、思いついたら何事もすぐ始められるし、しまっておいた宝物もすぐに出てくる。
大人になると余計なものがいつも出しっぱなしで、机は狭く、引き出しもグチャグチャで探し物ばかりしている。大切な思い出もどこか奥のほうに隠れて一生出てこない。

 ところで音楽って、そんな大切な思い出にくっついている紐みたいなものじゃないかな?
引っ張れば一瞬でそこに行けるの。パソコンのショートカットみたいに。ハードディスクの奥の奥にあっても、クリック一つでデスクトップに広げてくれる。
音楽ってきっと魔法に近い。

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