菜膳わたすげ ふるさと昔料理 その六

休みっこ、いま・むかし


酒まんじゅう

手のひらには、しっとりふわふわなおまんじゅう。2つに割ると、お酒の甘い香りが漂う。頬張れば、甘さ控えめのあんに、ほどよくきいた塩味がアクセント。
 「わたすげ」の酒まんじゅうは、八戸の地酒「八仙」大吟醸の酒粕と、地物の山芋の一種「だるま芋」を皮に練り込んでいて、上品でやさしい味わい。
 この酒まんじゅう、今は酒粕や甘酒で作るけれど、昔はもっとキョウレツだったらしい。
 「みんな、どんべ(どぶろく)作ってたからね。警察の見回りがあると、『巡査来た~』って慌てて、外の垣根とかに隠してた(笑)」と康子さん。

長いもゆべし

 一升瓶に麹と米、水、「種っ子」(酒母)を入れ、ワラでふたをして発酵させたどんべ。これで作った酒まんじゅうが休みっこ(おやつ)によく、出た。
 お酒好きのお母さんはどんべ多めで作ったし、まんじゅうをつまみながらどんべを飲むお父さんもいた。
 今でいう「アルコール」と「スイーツ」の距離が限りなく近いのが、なんだか面白い。

 「ゆべし餅」も昔から食べられてきたお菓子。麦粉と砂糖としょうゆ、わたすげではだるま芋も入れる。白ゴマと黒ゴマの2色で仕上げてみたらしをかけて、おしゃれなデザートの趣だ。


菜膳わたすげの山本康子さん

 けれど、康子さんにとっては「だってあめる(腐る)じゃない?」のお菓子。そのわけは、彼岸団子を作った後、余った粉が腐らないうちにとゆべしを作っていたから。粉屋(製粉所)に「粉をはたきに」(米を粉にしてもらいに)行き、団子とゆべしを作るのは、彼岸の恒例だったとか。
 今ではお土産にも人気のゆべしだけれど、「もったいない!」の心が生んだ素朴なおやつだったのだ。


わたすげ純米大吟醸酒まんじゅう

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