ジャッキーに聴け!

人類の技術革新はおよそ300万年前の旧石器時代に始まり、次に5000年前の青銅器、さらには3000年前の鉄器の発明、18世紀後半に始まるという産業革命からはまだ200年しか経っていない。
加速度的に発達する技術革新の最先端に今のAI技術があり、人類の歴史と合わせ考えると、ついつい手塚治虫作品を想起してしまう。
手塚治虫さんが亡くなったのは1989年、平成となって一月あまりだったので、昭和の終わりと「マンガの神様」の死が重なって記憶に刻まれている。
享年60歳というその若さに、当時も、あらためて今も驚かされる。
その中での『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『ブラック・ジャック』『ブッダ』『陽だまりの樹』などの膨大な作品群である。
近頃とくに脳裏に去来するのは『火の鳥』。
地球や宇宙を舞台に、「黎明編」「未来編」「ヤマト編」「宇宙編」「鳳凰編」など過去・未来・過去・未来と交互に描かれた作品は、人類の生命の本質に迫って圧倒的なスケールだ。
未来を描いたその中のひとつに、事故の後遺症で人間が石の塊にしか見えず、逆にロボットが生身の人間に見える主人公が、ロボット女性に恋をするというものがあった
ChatGPTなど生成AIの発達を見るにつけ、あり得ないことではないと考えてしまう。
なまじ面倒くさい生身の人間との接触よりは、ロボットのほうがよほど理想的な存在だと感じることがあっても不思議ではない気がする。
目を転じて現在、世界はハイパー資本主義のもとで、ひたすら貧富格差拡大の一途だという。
何しろ世界の人口の1%の超富裕層が世界の富のほぼ半分を所有しているというのである。
世界で最も裕福な10人の富の合計は7460億ドル、スイス、スウェーデン、タイ、アルゼンチン各国のGDPよりも多いというのだから。
この状況が異常でなければ何が異常なのだろう。
考えすぎて困ってしまったら、ジャッキーに聞こうと思う。
大正・昭和・平成・令和と4つの時代を生きて、2021年に99歳で亡くなられた瀬戸内寂聴さん。
二戸市浄法寺での法話を収録した『寂聴あおぞら説法Ⅱ』の中に、若い子から寂聴さんが「ジャッキー」と呼ばれたとあった。
1万人もの聴衆を前に「先のことは分からない、今この瞬間を切に生きなさい」と瀬戸内寂聴さんは繰り返し語っている。
今、生きるために必要なことは、ジャッキーに聴こう。

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