
AI君の関心領域
今号ではタヒチアンダンサーの天野佳子さんのタヒチ行をレポートしてもらったが、タヒチと言えば必ずゴーギャンを連想し、代表作『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』という哲学的なタイトルは何度も引用してきている。
南太平洋の楽園的なイメージのタヒチだが、うかつなことにフランスがポリネシアのムルロア環礁で行った核実験のことを置き去りにしていた。1960年代から1990年代に193回行われたが、のちに国際的な批判を受け1996年に停止された。
そしてたまたまだが、話題になっていた映画『関心領域』(TheZoneofInterest, 2022年)を観た。家族のピクニックから始まり、それから広い庭先で家庭の平穏そうな日常生活が映し出される。庭を囲む高い塀の向こうに見覚えのある見張り塔のような建屋が見える。ナチスドイツによってポーランドのクラクフ近郊に1940年から建設されたアウシュビッツの監視塔だと気づく。微かにだが悲鳴のような銃声のような音が頻繁に聞こえてくる。
塀をの向こう側には毎日大量虐殺が行われている強制収容所があり、塀の内側では幸福そうな家庭生活が営まれている。しかし風の吹く空は隔てられてはおらず、川もまたつながっている。幸福そうな家族生活にも不気味で不穏な空気が漂っている。
ウクライナやガザ、復旧にほど遠い能登半島の現実を時折見聞きしながら、テレビとかYouTubeのコンテンツをザッピングするように、シビアすぎる現実を切り離して、やれ正月だ、節分だ、ヴァレンタインだ、大谷さんだって何事もないように暮らしているというのは、一体どういう構図なんだと考えてしまう。
困った時はAI君に聞いてみようと思い、アメリカ生まれのChatGPT君と中国生まれのDeepSeek君にに問いかけてみた。
「映画『関心領域』とタヒチの核実験は、一見すると異なるテーマを扱っているように見えますが、両者にはいくつかの共通点や関連性が考えられます。映画「関心領域」とタヒチの核実験は、無関心、権力、倫理的な問い、歴史的な記憶といったテーマを通じて、深い関連性を持っています。どちらも、個人やコミュニティが直面する苦悩や、権力がもたらす影響について考えさせる重要な作品や出来事です」(ChatGPT君)
「タヒチの核実験と『The Zone of Interest』は、私たちに重要な問いを投げかけている。それは、私たちはどのような選択をし、その結果にどのように責任を取るのか、という問いである。歴史は、私たちに倫理的な選択の重要性を教えてくれる。過去の過ちから学び、未来に向けてより良い選択をすることが、私たちに課せられた使命である。タヒチの美しい海とアウシュヴィッツの暗い歴史は、一見すると対極にあるように見える。しかし、それらはともに、人間の選択とその帰結を考えるための鏡である。私たちは、この鏡を通じて、自分自身の選択を見つめ直す必要がある。なぜなら、歴史は繰り返されるからだ。そして、その繰り返しを止めることができるのは、私たち自身だからである」(DeepSeek君)
「私たち」の中にはChatGPT君、DeepSeek君もきっと入っていると思う。心強い。
この記事へのコメントはありません。