
種差、ひとりきり
井上陽水の『青空、ひとりきり』は、1975年11月にリリースされ、「楽しい事なら何でもやりたい♪笑える場所ならどこへでもいく♪悲しい人とは会いたくもない♪涙の言葉で濡れたくもない♪青空、あの日の♪青空ひとりきり」とノリのいい曲で、マイ・ベストソング200(多いか?)に入る名曲だ。
それを聴いたりカラオケで歌っていた頃は「何か地元って楽しい事もなく、笑える場所もなく、悲しそうな人も多くて、何だかなぁ~」と不貞腐れた気分を持て余していた。時が進み「地方活性化」「地方分権」「地方創生」とかの掛け声のわりには、それほど地方が元気になったこともなければ、むしろ「地方消滅」の方がより現実味を帯びてきている。
最近は「地方」というより「地元」とか「地域」という言葉を多く耳にすることが多いような気がしている。その違いをAI君から聞いたりもしたが、地方の人口減少・高齢化の進み具合に対して、東京一極集中はむしろ加速しているのではあるまいか。政府は中央省庁や関係機関の地方移転を推進するとしながら、実現したのは、2023年3月に「文化庁」が京都へ移転した、それのみ。その後はブームが去ったように省庁移転の話は途絶え、入れ替わりに日本維新の会がやっきとなっている議員定数削減と「副首都構想」が急浮上。今の大阪が副首都になったところで、根本のところ(地方消滅とか)が解決するようには思えないのだが。
ここで慌てて申し添えたいのは、政治や行政について全くの門外漢、素人の感想妄言にすぎないということ。ただ素人だからといって言う資格がないわけでもなく、国の様子を眺めては天気話のように話したい。
もう何十年も前のことになってしまったが、仙台市でもうけられたある宴席に同席し、支店長のような人物が本社役員を相手に最初は「仙台はとてもいいところで」とか言っていたが、酒がすすむにつけ「そろそろ何とか東京に戻してほしい」とつい口から漏れ出た。
政治評論家の寺島実郎さんが話していたが、なぜ地方分権、省庁移転が進まないかと言うと、つまるところ霞ヶ関のお役人の本音は「東京から出たくない」からだと言っていた。何だかんだ言いながら人間関係のしがらみで窮屈な地方より、「東京に出たいし東京から離れたくないから」だと。そういうマインドが変わらない限り、一極集中の流れも変わることはないと思う。
国営ではないが国営放送局のような朝の連続テレビ小説でも、地方出身者が東京に出て夢を具体化するというパターンのものばかりが、繰り返し放送される。その仕掛けのなかでは地方在住の若年層において、千葉だけど東京を冠するネズミの王国への憧れはますます強まるばかりだ。
何だか負け犬の遠吠えみたいな話になってきた。しかしいったい、何に「負け」ているのだろう? 種差、ひとりきりになって、ぼんやり考えてみようか、それとも「忘れたままの恋のささやき探してみようか」(井上陽水『いっそセレナーデ』)。



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