『エルヴィス』

7月に公開されたエルヴィス・プレスリーの生涯を描いた伝記映画『エルヴィス』(”Elvis”:バズ・ラーマン監督)を観てきました。個人的にエルヴィス・プレスリーのイメージは、腰を振る独特のスタイルで歌うロックンロール、とろけるように甘い歌声のバラード、ネバダ州ラスベガスでの復活ライブといったところでしょうか。言うまでもなく音楽界に影響を与えた大きな存在であるエルヴィス・プレスリーは1935年1月8日に生まれ1977年8月16日に42歳の若さで亡くなっています。キング・オブ・ロックンロール、ロックンロール創始者の一人、「史上最も成功したソロ・アーティスト」。デビュー後の熱狂的な人気が落ちて過去の存在となりかけてから、ラスベガスのショーで復活。そのドキュメンタリー『エルビス・オン・ステージ』(1970年”Elvis: That’s the Way It Is”) を観た覚えがありますが、ずいぶんケバくて濃いなぁという印象しか残っていない自分はまだまだ幼稚で浅かったね。
そのラスベガスでは、1969 年~1976 年の間に837回連続でコンサートチケットが完売。その華やかなステージの裏側で、休憩時間の楽屋で、エルビスは妻プリシラとの離婚話で口論していたという――そういうエピソードを、プレスリーファンの音楽評論家・湯川れい子さんが以前ラジオで紹介していました。エンターテインメント業界の光と影のコントラストの強さに驚きました。ゴスペル、リズム・アンド・ブルースなど黒人音楽との結びつきが思っていたより深かったことも映画で知りました。
ビートルズがエルヴィスを訪ねた時、「君たちのレコードは全部持ってるよ」と言ったことに対して、ジョン・レノンが「僕はあなたのレコードは1枚も持ってないけどね」と言って、その場が凍りつき、それでエルヴィスは気分を害して、それから平たく言えばジョンは出禁になって、あとでそれをジョンが反省した――というのをWikipediaで読んで、ちょっと笑えました。
映画館でも年配者がほとんどでしたし、若い人にはおそらくあまり興味をひかないトピックでしょうが、主演のオースティン・バトラーはまだ30歳。役作りのために3年間の猛特訓を行い、吹き替えなしの歌とダンスで往時のエルヴィスを再現しています。『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』(2009年)を観た時と同じく、それは〝神の領域のパフォーマンス〟(こんなことをやっていたら、死んじゃうよ)のように感じたというのは大仰なのか、どうか。

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