『風雲児たち』と『アメリカン・ユートピア』
先月もちょっと触れましたが、歴史大河ギャグコミック『風雲児たち』(みなもと太郎)を、たまたまブックオフで全20巻セットが出品されていたので、えいや!っと買ってしまいました。それらをまだ読み切らないうちに続編の『風雲児たち幕末編』(全34巻)がまたちょっとずつ並び出し、セットで出たらと考えているうちに7割がた並んできたので、矢も楯もたまらずに買って、不足の何冊かをAmazonで新刊購入。めでたく全54巻を揃えたのでありました。
作者のみなもと太郎氏は、昨年2021年8月7日、東京都内の病院で74歳で死去され、『幕末編34』で未完となってしまいました。
保科正之、林子平、高山彦九郎、大黒屋光太夫などなど、何となく聞いたことがあるけれど、あまり詳しく知らないという歴史上の人物が次々登場します。たとえば江戸時代、調査探検のために蝦夷地(北海道)に向かった最上徳内、松前藩の妨害で野辺地に留まらざるをえず、その地の廻船問屋の娘ふでと結婚したこととか。
面白くてためになるというか、面白がっているうちに勉強しているという――これは作者のすごい力量なのではなかろうかと驚いているのです。
そして映画館では見逃してしまった『アメリカン・ユートピア(David Byrne’s American Utopia)』。
けっこう評判にもなった映画をアマゾンプライムで視ることができました。
新型コロナの影響で再演が幻となったというブロードウェイ・ミュージカルを、アメリカのバンド「トーキング・ヘッズ」のデヴィッド・バーンが、スパイク・リー監督とともに映画化したもので、11人のバンドと共にパフォーマンスが繰り広げられます。ステージはいたってシンプルで、出演者と照明以外は何もありません。マーチング形式の演奏とダンス、それもキレキレッのBTSとかのようでなく、1952年生まれのバーンが「私はこのように踊る(I Dance Like This)」と歌って踊る、少しスローなユーモアのあるダンスです。
「人間が最も見ているのは他の人間だという話です。自転車や美しい夕焼けよりも恐らくポテトチップスの袋よりもです。ショーで、一番大切な要素以外を排除したらどうかと思いました。そうすると残るのは人間、僕らと皆さんだけ。これがこのショーです」とのバーンの言葉は、個人的な感覚的ストライクゾーンにストレートに入りました。
整いました。 『風雲児たち』と『アメリカン・ユートピア』――どちらも「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに」(作家・井上ひさしさんの言葉)という作品でしょう。
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